約5億年前、地球に最初に上陸したのは動物ではなく植物でした。その存在は大地を覆い、光合成によって酸素を生み出し、地球環境を大きく変化させました。動物たちがその後に地上へ進出できたのも、植物が作り出した環境あってのこと。今も動物たちは植物に頼り、生きています。しかし、その偉大な植物の真の姿については、まだまだ多くの謎が残されています。
動けないからこそ、「動く」植物たち
動かないように見える植物は、実際には驚くべき感覚機能を駆使して環境に「能動的に」働きかけています。多くの動物が備えている視覚や聴覚、嗅覚といった感覚はもちろんのこと、植物たちはさらに光、水、重力、温度、土壌、栄養分、毒素、微生物、草食動物(敵)や仲間の植物からのメッセージまで感知するのです。
つる植物の脅威の感知力
例えば、マメ科のつる植物は巻きひげを他の植物に絡ませながら成長します。その際、支えとなる樹木の方角や距離を正確に把握し、無駄なエネルギーを使わずに最適な方向に向かって伸びていきます。これほどの精密な感知能力を持つ植物たちが、どのようにして自らの「センサー」を発達させてきたのかは、研究者たちを驚かせ続けています。
植物は「音」を聞き、そして出している?
イタリアの植物学者ステファノ・マンクーゾ氏によれば、植物の細胞は成長する際に「カチッ」という低い音を発しています。この音は通常、人間の耳には聞こえませんが、植物はこの音を利用して周囲の状況を把握し、エコーロケーションを行っている可能性があると言います。
また、植物学者モニカ・ガリアーノ氏の研究によれば、トウモロコシの根は220ヘルツの微細な「ハミング音」を出しています。さらに、同じ周波数の音をトウモロコシに聞かせると、根はその音の方向へと近づいていくという結果が得られました。地下の土壌では、根が出す音は消え去り、人間には聞こえません。しかし、植物同士はこれらの音をコミュニケーションの手段として利用しているのではないかと推測されています。
音で成長を操作する?フェンネルの例
フェンネルというハーブは周囲に生える他の植物の成長を抑制するための化学物質を分泌することで知られています。しかし、ある実験でフェンネルを箱で覆い、化学物質が漏れないようにした状態でトウガラシの苗を隣に置くと、通常よりもトウガラシの成長が早まったのです。研究者たちは、フェンネルが出す特定の音をトウガラシの苗が「聞き分け」、自分を守るために急速に成長を促したのではないかと考えています。これは、植物が音を情報として使い、周囲に働きかける能力を持つことを示唆しています。
「インターネット」を持つ植物たち:根っこのネットワーク
さらに驚くべきは、植物が地下で根を通じて他の植物とコミュニケーションを取っているという事実です。これは「ウッド・ワイド・ウェブ」とも呼ばれ、地下の根と菌類がネットワークを形成し、情報のやりとりや栄養素の分配を行っています。
森林生態学者スザンヌ・シマード氏は、森の中のモミの木に炭素の放射性同位体を注入し、その炭素がどのように森全体へ広がるかを観察しました。結果として、注入された炭素は数日間で最大30メートルも離れた木にまで行き渡り、古い木がネットワークのハブとして、他の木とつながりを持っていたことが明らかになりました。これらのネットワークは、害虫の襲来に対する早期警戒や、炭素、窒素、水といった植物にとって必要な要素の共有に活用されています。
まさに、植物たちが自らの「森のインターネット」を駆使して、コミュニティ全体の健康と安全を守っているのです。
植物には記憶がある?
ここまで見てきた植物の能力を考えると、「動かない」というだけで動物とは別物だと思うのは間違いかもしれません。動物の記憶は脳に蓄えられていますが、脳のない植物も「記憶」によって行動を変えることができるとしたら、これはまさにミステリーです。
先ほど紹介したモニカ・ガリアーノ氏は、オジギソウが「学習」できるかどうかの実験を行いました。オジギソウは触れられると葉を閉じる植物で、ガリアーノ氏はそのオジギソウを高さ15センチの場所から何度も落とすという実験を行いました。最初のうちは葉を閉じていたオジギソウも、繰り返し落とされているうちに葉を閉じなくなりました。これは、オジギソウが「自分に危険はない」と学習し、無駄なエネルギーを使わないように「記憶」した結果だと考えられています。
植物のコミュニケーションは人類の未来を変える?
植物の驚くべき感覚やコミュニケーションの仕組みが解明されれば、それは人類にとっても大きな可能性を秘めています。例えば、農業において音を利用すれば、特定の植物の成長をコントロールすることができるかもしれません。これにより、化学肥料や農薬の使用を抑え、環境への負荷を減らすことが期待されます。
以上のように、植物は一見動かないように見えながらも、実は私たちが思っている以上に「能動的」で、「賢く」環境に対応しています。彼らの持つ不思議な感覚とコミュニケーションの力は、まだまだ私たちの知らない部分が多く、研究の余地がたっぷりあります。そして、それらの謎が解き明かされるとき、私たちの世界の見方も大きく変わることでしょう。
最後に、ステファノ・マンクソーのTedで面白いことを行っていました。
ノアの方舟で語られている物語で、神様が長い間地上を水に沈めようとしていました、ノアはあらゆる種類の鳥、全ての動物や動く生物のつがいを連れて行かねばなりませんでした、ここで根本的な間違いがあります「植物は?」
地上の生物は全て方舟から来たとしています。
鳥や家畜や野生動物のことです、植物は生物ではないわけです、これが問題なのです、これが聖書に記されていない問題なのです。
でも植物は常に人類と 共にあったものです。
参考サイト
・TED日本語 - ステファノ・マンクソー: 植物が持つ知性の根 | デジタルキャスト